みぎきき

こどもがいる生活の忘備録

出生前診断について

高齢出産となるので、妊娠発覚と同時に出生前診断は考えた。

ただ通っていた病院では一切勧められることはなく、自分で検査の種類などを調べ始めた。

 

どこでどの検査をすべきか決めかねている時にたまたま宋美玄さんのブログを読んで、彼女がFMC東京クリニックで胎児検査を受けたという記事を見た。彼女が当時このクリニックの医師であることもその時に知った。

 

サイトを見ると初期の検査が可能なのは妊娠13週まで。

その時点で11週だった自分は職場からすぐにクリニックに電話して、翌週妊娠12週での予約を入れた。ここでしかできない検査もあって多くの患者さんが妊娠4〜5週で予約を入れ、全国から検査に来るらしいので、空きはほぼないに等しかったそうだが、平日で何時でもいいというこちらの状況もあり検査を受けられることになった。

 

検査当日、仕事を抜けて1人で向かった。まずは遺伝カウンセリング。

夫婦で来ている人もいて、計4組でのカウンセリングだった。結果としてわたしにはこれがとてもよかった。先日Twitterでも女性の出産年齢ごとの染色体異常が発生する確率表が拡散されていたけれど、つまりあれも数字の見せ方で受け取り方はいろいろ。実際出産年齢40歳での数値を見れば、25歳の数倍と見えて恐ろしくなるけれど、それを%に換算すれば2%だったりする。降水確率2%で傘を持っていくか?と言われればNOだ。

確かに年齢とともに確率が上がるのは事実だし、知って置いてもいいと思う。ただ遺伝カウンセリングでそもそも染色体異常とは?など基本の話をしっかり説明されると、過剰に心配することもなければ、同時に年齢が若いからというだけで無視できる確率でもないということがよくわかる。それと同時にカウンセリングによって受精卵が今おなかで育っている奇跡もようやく理解できた気がする。その頃の自分はまだ妊娠しているという自覚も実感もまったくなかったから。

それから胎児検査で心臓疾患などが見つかった場合。生まれてすぐに適切な処置が必要だと事前にわかれば、設備が整っていて赤ちゃんが必要な治療をすぐに受けれる病院を選んで産むことができる。

 

自分が選択した検査はFMFコンバインド・プラスという初期の血清マーカーと超音波検査のセット。この組み合わせで染色体異常の発見率は90%を超えていたと思う。

カウンセリングに出席した人はまだ妊娠超初期の段階で、すでに検査が受けれらる週数の妊婦は自分だけだった。みんなは今日のカウンセリングを受けて、数週間後までにどの検査を受けるか検討することになる。わたしはそのまま、血液を採取し、いよいよ超音波検査となった。

 

部屋に入ると驚くほどの広さに巨大スクリーンとベッド。さすがに1人で臨んだことに緊張と心細さがあったけれど、このクリニックは誰も白衣を着ていない。カウンセリングをしてくれた先生も、検査担当の先生も私服のままで、施設も病院臭がなく徐々に緊張もほぐれた。ベッドに横たわると、スクリーンに宇宙人のような胎児が映し出される。先生がお話ししながら説明をしてくれている間、わたしはそれがサンプル動画だと思っていた。途中もしやと思って「これはわたしのおなかの中ですか?」と聞くと、「そうですよ、今の赤ちゃんの様子です。」と笑って返された。

 

信じられなかった。

 

5cmと聞いていた小さなかたまりが、頭・腕・指・鼻と生き物として映し出されて元気に動いていた。信じられなかった。自分の中にこの生きものがいるなんて。5cmの小さな人間だった。完全に生きものだった。

 

心臓弁やその動く音、指の数…先生が次々と説明をして検査をしてくれるけど、あまり頭には入らず、自分の中に生きものがいる衝撃とそれがぴょんぴょんと跳ね続けてることへの笑いが止まらなかった。先生も「ジャンピングしてますね、すごくしてる。」と笑った。わたしがあまりに笑うもので、スクリーンは砂嵐になった。なんとか笑いを沈めてもう一度中の人が映ると、脚で子宮の壁を蹴ってスクリーンから飛び出すほどのジャンプをして画面に何も映らなくなった。わたしも先生も爆笑した。「元気ね。」その言葉がこんなにうれしくあたたかく感じるなんて。40分ほどの時間をかけてありとあらゆる角度から先生が見てくれて終了。

 

結果は7〜10日後くらいだったと思う。再度クリニックに出向いて、詳細な数値などを別の先生から説明を受けた。これも仕事を抜けて1人で行った。もちろん検査以上に勇気が必要だった。朝から何も食べられず順番が来る頃はノドもカラカラだった。

心臓弁の逆流に若干不安はあるけれど、その他の数値は心配のないものだった。より詳しい検査を希望するなら中期の胎児検査に進むこともできるけれど、それは必要なかった。

 

費用は合計8万円ほどで安くはない。というかすごく高い。

とくにそこを深く考える間もなく予約を入れてあれよあれよと進んだけれど、どのみち数万円は必要な検査に変わりはないので、自分はたった1人で受ける状況では検査前も後も先生からのケアが行き届いているこのクリニックでよかったと思ってる。

何よりカウンセリングと高精細な超音波検査の画像で、自分の中に赤ちゃんがいることを初めて実感できた。大事にしなきゃいけない、大事にしたいとたぶんあの時に初めて思った。人知れずあんなにジャンプし続けてる宇宙人みたいな小さな人がいつだってここにいるのか思うと、道を歩いていても笑いがこみ上げた。

しばらくして性別が男の子とわかった時には、ジャンピングの姿を思い出して、どんなに落ち着きのない暴れん坊が生まれて来るのかと不安になったものだった。

 

1つアドバイスできるとすれば、やはり誰かが一緒だと心強いと思う。わたしは不妊治療も妊婦検診もこの出生前診断も、すべて1人で行ったけど、もし付き添ってくれる誰かがいるのならその方がいい。

クリニックにも事前に1人でも問題はないかと確認はしていたけれど、もちろん問題はないけれど、誰かと寄り添って待合にいる人たちの中にいつでもずっと1人でいるのは、なかなか堪えることもある。

検査当日はそれを予想できたので、検査後に友達2人とランチの予定を入れて、今まさに起こったことを話したり、プリントしてもらった5cmの人の鮮明すぎる画像を見せて驚いたり笑ったりした。仕事に戻る前に一度完全に緊張から解かれる必要があったから。

 

そして無事に生まれた赤ちゃんは今のところおとなしボーイ、今日で生後10ヶ月です。 

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